胆嚢の病気が「腸」から変わる可能性 ― 糞便微生物移植(FMT)の症例より
7歳のトイプードルに見つかった胆嚢粘液脳腫が、腸内フローラの改善を促す糞便微生物移植(FMT)で劇的に改善した症例を紹介します。
本症例は、神戸市獣医師会の症例検討会でも発表しました。

胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)とは?
胆嚢は「胆汁」という消化液をためておく袋です。
胆嚢粘液嚢腫は、その中で胆汁がゼリー状に固まり、流れにくくなる病気です。
進行すると胆管が詰まったり、胆嚢が破裂したりすることがあり、
外科手術(胆嚢摘出)が必要になるケースもあります。
しかし無症状の段階では、
「今すぐ手術をするべきなのか」と悩まれる飼い主さんも少なくありません。
今回の症例について
7歳のトイプードル。
超音波検査で典型的な胆嚢粘液嚢腫が見つかりました。幸いにも、まだ症状はありませんでした。
血液検査では中性脂肪(TG)が非常に高い状態。
近年、胆嚢粘液嚢腫は「脂質代謝の乱れ」と関係している可能性が指摘されています。

私たちは、「腸内細菌」に注目しました。
腸は“代謝の港”
腸内細菌は、胆汁酸や脂質の代謝に深く関わっています。
腸内環境が乱れる(ディスバイオシス)と、胆汁の流れや質にも影響する可能性があります。
今回行ったのは「糞便微生物移植(FMT)」という方法です。
健康なドナー由来の腸内細菌を、浣腸で少量ずつ移植しました。
治療後の変化
治療を重ねる中で、
- 中性脂肪は正常値へ改善
- 胆嚢内のゼリー状構造は徐々に縮小
- 最終的には胆泥レベルまで改善
という変化がみられました。
治療期間中、大きな副作用は認めませんでした。

この症例が教えてくれること
この症例は、「胆嚢の病気が、腸内環境の改善によって変化する可能性」を示唆しています。
もちろん、FMTはまだ標準治療ではなく、ドナー選択や方法など慎重な検討が必要です。
すべての症例に当てはまるわけではありません。
ですが、体は臓器ごとに孤立しているのではなく、
「腸」という港を通じて全身がつながっています。
胆嚢の病気も、代謝や腸内環境という“土台”から見直すことで、
新しい選択肢が生まれるかもしれません。
大切なのは、「手術か経過観察か」の二択ではなく、
体全体をどう整えるかを一緒に考えること。
そして大事なことは、症状が現れる前に異常をみつけること。
この子は定期検査で早期発見ができたから、手術以外の選択肢にトライできました。
「腸を守ることは病気の予防になる」
そう感じていただけたら嬉しいです。
