「まぶたの腫れ」は食物アレルギーのサイン? — トイプードルで見つかった“遅発型”アレルギーの一例
3歳のトイプードルに起こったまぶたの強い腫れが、アレルゲン除去食で劇的に改善した症例を紹介します。
症例の概要
3歳のトイプードルが「まぶたの腫れ」を主訴に来院されました。最初は右目周囲だけでしたが数日で両目のまわりが全周性に腫れ、涙や黄色い目ヤニが認められました。抗菌薬やステロイド点眼では改善せず、血液検査で全身性の炎症(CRP上昇)が確認されました。


(はじめは右眼下まぶたの小さな腫れが、数日で左右の全周囲に拡大しました。)
詳しい検査と診断
通常のIgE検査では陰性
一般的な即時型アレルギーを調べるIgE検査はすべて陰性でした。見た目だけでは原因が分かりにくいケースです。

リンパ球反応検査(LST)で遅発型の反応を検出
さらに踏み込んだ検査としてリンパ球反応検査(LST)を行うと、小麦・米・七面鳥などに対するリンパ球の反応が示されました。これは「遅発型アレルギー(T細胞介在)」の可能性を示しています。

治療(除去食)と経過
アレルギー検査の結果を待つ間、まずは抗生物質とステロイドを内服に切り替え、細菌感染と炎症を沈める治療を行いました。腫れは多少は引いたものの、良くなったとは言い難い程度でした。

そこで、LSTで反応が少なかった「魚由来タンパク」を主成分とする療法食に切り替え、厳格な除去食試験を開始しました。開始後約3週間で眼瞼の腫れは著明に改善し、1か月半後には赤みや目ヤニ、皮膚、加えて便の状態まで改善しました。

遅発型食物アレルギーの重要性
本症例は、一般的なIgE検査では検出されない遅発型食物アレルギーが、顔面・眼瞼の難治性炎症の主要因となり得ることを示しています。
薬で一時的に抑えるだけでなく、原因食材を特定して避けることが根治につながる良い例ですので、飼い主さまの同意を得て紹介させていただきました。
飼い主さんへのメッセージ
わんちゃんの体調や皮膚のサインは、日々の食事と深く結びついています。顔まわりの慢性的な赤み・腫れ・涙やかゆみが続く場合は、「見えにくい遅発型アレルギー」が潜んでいることがあります。まずは獣医師に相談し、必要に応じてLSTなどの検査を検討しましょう。
原因を見つけて避けることは、薬に頼り続けるよりも動物にとってやさしい治療です。気になる症状がありましたらぜひ当院へご相談ください。
こんな方におすすめ
- 顔まわりの皮膚炎が治りにくいわんちゃん
- 一般的なアレルギー検査で陰性なのに症状が続く場合
- 薬だけでなく根本的に改善したい飼い主さん
※本記事は院内症例をもとに一般飼い主様向けに要約しています。
検査や療法は個々の症例により異なりますので、診察の上で治療方針を決定します。